SEC-MALS-VISによるPLGA(乳酸-グリコール酸共重合体)の特性解析

乳酸グリコール酸共重合体 (Poly(lactic-co-glycolic acid), PLGA) はグリコール酸と乳酸を重合単位とした共重合体です。2種類の重合単位はエステル結合で結合しており,線状のポリエステル鎖を形成しています。PLGA製品は生分解性と生物適合性 (拒絶反応を起こさないこと) を有しており,ドラッグデリバリーへの応用のみでなく,多くの治療用品が米国食品医薬品局 (FDA) により認可されています。このPLGAの特性は両モノマー単位の比と分子量分布に依存しています。

PLGAのサイズ排除クロマトグラフィー (SEC) による特性解析では,校正用の適切な標準試料がないため,信頼性のある結果が得られません。さらに,直鎖状のポリエステルに少量の多官能性モノマーが修飾され,異なる分岐度をもつPLGA鎖が得られます。この分岐度は各PLGA解析のもう一つの変数となるため,通常のカラム校正法のみでは分析できません。

このアプリケーションノートでは,SECシステムに多角度光散乱検出器 (Multi-Angle Light Scattering, MALS) DAWN HELEOSと示差屈折率検出器 Optilab rEX、粘度検出器 (VIS) ViscoStarを接続して,2つの市販されているPLGA試料を解析した例を紹介します。SEC-MALS-VISシステムでの測定により,分子量分布に加え,固有粘度と分子量の関係 (Mark-Howink-Sakuradaプロット) が得られます。そのデータからポリマーの分子構造をより詳細に知ることができます。

1. 2つのPLGAサンプルの微分分子量分布曲線.

 

1に示した分子量分布は重量分率に基づいています。プロットから,2つのサンプル間で分子量の範囲が大きく異なっているのが判ります。また図2は,これら2つの試料と比較の為に用意した直鎖ポリスチレンのMark-Howink-Sakuradaプロットです。直鎖のポリスチレンはMark-Howink-Sakuradaプロットの傾きが0.71であり,良溶媒中での直鎖ランダムコイルの典型的な値を示します。赤色で示した試料の傾きは直鎖構造のものとほぼ一致しています。しかし,高分子量側では直線からプロットがわずかに外れており,分岐高分子の存在が示唆されます。これに対して,青色で示した試料のMark-Howink-Sakuradaプロットは湾曲しています。湾曲したMark-Howink-Sakuradaプロットは分子量領域の違いによる構造の変化を示し、一般的に同一組成の高分子においては分岐構造を示します。高分子量領域でのMark-Howink-Sakuradaプロットの傾きは0.48であり,有意な分岐が存在することが示唆されました。

2. 2つのPLGAサンプル (赤線と青線) と直鎖ポリスチレン (マゼンタ) Mark-Howink-Sakuradaプロット. データから直線を外挿.

 

SEC-MALS-VISPLGAポリエステルの分子量分布だけでなく,分子構造の細かな違いを示すことができ,特性解析を行う上で優れた手法であることが分かりました。

詳細は、PDFマーク.png (←こちらをクリック※英文原稿)をご覧ください。

本アプリケーション内で使用した装置の詳細は以下をご覧ください。

多角度光散乱検出器DAWN

高性能示差屈折率検出器Optilab

粘度検出器 ViscoStar

ページトップへ