蛋白質の三次構造を形成する力は、蛋白質ベースの治療薬において、望ましくなく、しばしば危険な蛋白質凝集体を作り出す原因にもなります。そのような凝集体の存在は、潜在的に重要な治療製品の中止を意味します。FDAは、2014年の業界ガイダンスで、「治療用蛋白質製品の製造業者は、蛋白質の凝集を可能な限り最小限に抑えることが重要である」と述べていますが、特に重要な範囲となる500nm~10μmにおいて、この目標を達成するための技術は今のところ、存在していません。
このレポートでは、米国Spheryx社の特許技術であるTotal HolographicCharacterization®(THC)法を用いたホログラフィック型個数カウント式粒度分布測定器xSightにより、蛋白質凝集体の検出とモニタリングを行った例を紹介致します。
THC法は、個々の粒子のホログラムを計測することにより、各々の粒子の粒子径を求めるだけでなく、各々の粒子の屈折率情報から粒子を識別できます。つまり、バイオ医薬品において、定量が求められる蛋白質凝集体を、シリコンオイルや気泡など他の不純物と区別し、選択的に、その粒子径と濃度(個数/mL)を求めることができます。
以下の図は、xSightにより、蛋白質凝集体、シリコンオイル、両者の混合品の測定結果(散布図)です。各々、横軸は粒子径(μm)、縦軸は屈折率(n)を示し、散布点における粒子密度(濃度)を色分け(最も高濃度の点が黄色、低濃度の点は青色)しています。
粒子径の近い蛋白質凝集体とシリコンオイルを確実に識別し、粒子径、濃度を求めています。
次に、以下の結果は、さまざまな力と持続時間で標準シリンジからサンプルを排出した場合の効果を示しています。 より速い排出は、増加したせん断力を引き起こし、蛋白質凝集の増加を誘発し、同時にシリンジの表面から追加のシリコンオイルを溶出させます。 サイズだけでは、蛋白質凝集体とシリコンオイルは区別されません。 xSightを使用した屈折率の測定により、シリコンオイルとタンパク質凝集体の両方の濃度を独立して決定できます。
THC法は、検出効率にも優れています。画像解析法では、検出に難のある緩衝液に糖を加えた溶液においても、蛋白質凝集体を確実に検出し、シリコンオイルとの識別を行うことができます。