新規マラリアワクチン候補のSEC-MALS測定
マラリアは命に係わる病気の一つで、今でも30秒毎に5歳以下の子供がこの病気で亡くなっています。本アプリケーションの提供先である米国国立衛生研究所(NIH)マラリアワクチン開発支所では、治験フェーズ1、フェーズ2用組換え蛋白ワクチンの生産及び解析を行っており、組換え蛋白ワクチン候補の精製、同定、凝集の理解にWyatt社の製品が役立っています。ここでは、抗原候補のSEC-MALS分析について紹介します。
Fig1はSEC-MALSの測定結果です。この結果から、ワクチン候補の溶液中には3種の集合体が含まれていることが判ります。検討の結果、モノマーピークの立ち上がり付近でモノマーとダイマーが分離できていないと結論付けました。加えて、恐らくピークトップが12.5分付近となる高分子成分が、ピーク全体に渡って溶出していると考えられます。その見解はFig2.をご覧ください。
このように、SEC-MALS分析を行うことで、3種の集合体、モノマー、ダイマー、テトラマーの存在が明らかになり、後に沈降平衡法によっても確認できました。
Fig1.SEC-MALSの測定結果です。モノマーピークには、テトラマーとダイマーも含めれています。モノマーの分子量は43kDです。 |
Fig2.ワクチンのモノマーと凝集体の分析結果の解釈 |
12.5分に溶出している高分子成分は、全領域に溶出しているようです。モノマーピークの立ち上がり付近では、分子量の小さい成分が溶出してきたため、Mwが急激に小さくなっています。高分子成分が溶出している為にモノマーピークのMwは不自然に大きくなり、他成分単独と比べると小さくなっています。オレンジのラインは、モノマーピークが存在しない場合の高分子成分のピークを示しています。 モノマーピークの後方で分子量が大きくなっているのは、モノマー成分が無くなり、高分子成分が残っている為と考えられます。 |
このアプリケーションノートは、米国国立衛生研究所マラリアワクチン開発支所のRichard L.Shimp,Jr氏.、David N. Narum氏, Peter F. Duggan氏のご厚意で、Wyatt Technology社にご提供頂いたものです。
本アプリケーションで使用した装置の詳細は以下をご覧ください。