合成ゴムは驚くべきスピードで天然ゴムに置き換わっており、現在市場で使用されているゴムの7割以上が合成ゴムであると言われています。 ちなみに、アメリカでは年間500万トンの合成ゴムが生産されています。 主要な合成ゴムはブタジエンとスチレンの共重合体で、ラテックスフォームはカーペットやグローブに応用され、凝固ラテックスはタイヤや機械材料などに利用されています。 これらすべての製品について、重量平均分子量と分子量分布が製品の性能と密接な関係を持っています。 合成ゴムの分子量の測定は、通常サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により標準試料を用いて行われていますが、多角度光散乱(MALS)検出器を使用することにより、標準試料を用いたキャリブレーションの作成作業を行わずに、絶対分子量を直接測定することができます。 ここでは、DAWN DSPとSECを接続し合成ゴムの絶対分子量と分散度、rms半径を測定した例を紹介します。 この分析ではMALS検出器としてDAWN DSP、濃度検出器としてOptilab DSPを用いて、合成ゴムをトルエン溶媒中でSEC測定しました。 トルエン中のポリブタジエンの屈折率増分(dn/dc)は比較的低くブタジエン-スチレン共重合体のdn/dc値はスチレンの比率と共に増加しています。
図1は、合成ゴムの分子量とその分布について、標準試料を用いたキャリブレーションの作成を行わずに絶対分子量を測定しています。 重量平均分子量と分散度に加えて、DAWN DSPは各溶出量でのrms半径を直接測定する事によりポリマーの形状を決定する事ができます。 ブタジエンは分岐した高分子を形成し、スチレンは直鎖高分子を形成している事は周知の事実ですが、DAWN DSPを用いることによってそれを確認する事ができます。
図2は、2種類の合成ゴムサンプルの分子量対半径の対数プロットを示しています。 このようなプロットのスロープはポリマーの形状を表しています。 0.5から0.6の傾きはランダムコイル構造の直鎖ポリマーを表しています。 その一方で、球はおおよそ0.3のスロープです。 ポリブタジエン(0.25)とブタジエン-スチレン共重合体(0.38)の値はこのポリブタジエンがスチレンブタジエン共重合体より多く分岐している事を示しています。
図1:光散乱検出器のチャンネルの1つからの信号を重ねた合成ゴムサンプルの分子量対溶出容量の関係を示しています。
図2:2つのサンプルのrms半径と分子量の関係(形状プロット)。スロープ(勾配)は分子の形状(棒状、コイル、球状)を表しています。