キチンは、セルロールと並んで、地球上で最も多く存在するバイオポリマーで、節足動物の皮膚、軟体動物殻、菌類の細胞膜などの重要な成分をなす物質です。 キチンは、水処理、写真用エマルジョン、合成繊維・織物などに用いられます。
キトサン(N-acetylglucosamine)は、キチンを脱アセチル化した物質で、エビやカニの殻から得られます。 キトサンは、外傷の治療等の治療目的、化粧品、ダイエット用品等に用いられます。
これらの応用分野においてキトサンを使用する場合には、そのモル分子量とモル分子量分布を知ることが重要となります。 これらの測定には、サイズ排除クロマトグラフィーと光散乱検出器とを組合せた、SEC-MALS法が簡単に絶対分子量を測れるという面で有効です。 ここでは、SEC-MALS法により、2種類のキトサンのサンプルを測定した結果を示します。
キトサンは、粘度が非常に高い物質ですので、SECのサンプルとしては、濃度が低いものを注入量を多くして「viscose-fingering」効果を防ぎます。 2つのキトサンのサンプルのモル分子量はMALLSによって測定され、溶出容量の関数として図1にプロットされています。 モル分子量は短調減少している事から、SECにおける分離条件は適正なものと思われます。
積分モル分子量分布を図2に示します。これより2つのサンプルが明らかに違うことがわかります。 Wyatt社のASTRAを用いると、指定したフラクション範囲の重量を計算して表示することができます。 例として図2には、50kD以下および、500kD以上の重量を示しました。 この計算結果は、品質管理に用いると理想的といえます。
この結果からわかるように、SEC-MALLS法はポリマーのキャラクタリゼーションに必要不可欠な手段といえます。 標準試料や実験式を用いることなく、絶対モル分子量とモル分子量分布の測定が行える点が大きな特長です。
図1:90°の光散乱信号とRIの信号により作成されたモル分子量と溶出容量のプロット。
図2:2種類のキトサンのサンプルから作成された積分モル分子量分布のプロット。サンプル間の違いがよく分かります。