エポキシ樹脂は、合成樹脂の中で重要な樹脂の一つです。 エポキシ樹脂は、各種の工業分野で使用されており、コーティング、接着剤、ラミネート、金型等に使用されています。
従来は、単純な物性値(エポキシ基・塩素・グリコール基の量、粘度、軟化点等)が用いられてきました。 しかし、これらの量だけではサンプル間の差を見るのに充分ではなく、エポキシ構造と樹脂の性質との関係を見るのにも充分ではありません。
実際的には、ほとんど全ての合成樹脂について、適当なSECのキャリブレーション用の標準試料はありません。 沈殿法によるサンプル調製は面倒であり、多くの場合不充分な結果しか得られません。 ポリスチレン標準試料が一般的に使用されていますが、それにより得られる結果は、真の値からは遠く隔たっており、正しい絶対値は、光散乱検出器(DAWNまたはminiDAWN)とサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)との組合せでなければ求められません。
図1には、エポキシ樹脂のサンプルをSECで分析したクロマトグラムを示します。 光散乱の信号からは、miniDAWNがエポキシ樹脂の低モル分子量の検出にも使用できることが分かります。 実際、SEC-MALSで求めたMnの値は、絶対法である蒸気圧浸透圧計(VPO)による測定結果と一致します。
図2には、同一のエポキシド等価重量をもつ2つのエポキシ樹脂サンプルの微分モル分子量分布のカーブを示しました。 SEC-MALSが合成樹脂のモル分子量を正確に決定できる、最も有効な方法であることを示しています。 MALSの使用により、従来の分析方法や標準試料とRI検出器だけを用いたSECによる方法とは、大きく異なる測定結果が得られることが分かります。
図1:ビスフェノールA系のエポキシ樹脂のSECクロマトグラム。上はMALS、下はRI検出器。SEC-MALSによるMn=1,520g/mol、VPOによるMn=1,520g/mol。
図2:同一のエポキシド等価重量(=1,670)をもつ2つのエポキシ樹脂サンプルの微分モル分子量分布。