静的光散乱は主としてGPC/SECのオンラインの検出法としてもちいられています。 光散乱は直接、絶対分子量を測定できるのでカラムキャリブレーションを必要としません。
本ノートでは、DAWN(r)DSP多角度光散乱検出器をイオン交換カラムで分離されたタンパク質の研究にUV検出器と接続して用いました。 このアプリケーションではUV検出器は280nmの波長が用いられました。 しかしながら多くの分子がこの波長で吸収を示すため、比較的無差別な検出方法であり、この分析上の大きな問題点の一つとしてヌクレオチドと蛋白を区別することが難しいことがあげられます。
DAWNは微量の低分子量の不純物には応答は小さく、グラジエントによるベースラインのドリフトもピーク高さに対して小さいという特徴があります。
図1で注入されたサンプルは少量のグアノシンモノフォスフェート(GMP)を添加した、牛血清アルブミン(Bovine serum albumin, BSA)とピルベートキナーゼ(PK)の混合物です。 主なサンプルピークはクロマトグラム上で同定されています。 BSAをブロードなショルダーを持った鋭いピークとして検出するには多量のサンプルが必要でした。 DAWN(r)を用いることによりBSAの濃度とdn/dc値が既知であればピークの絶対分子量がDAWN(r)解析ソフトASTRAにより計算できます。
図2には分子量と溶出容量の関係にUV検出器のデータを重ね書きしたものです。 シャープなピークはBSAモノマーでありショルダーはアグリゲートを含んでいることがわかります。 BSAモノマーの分子量が高いのは絶対UVキャリブレーション定数がわかっていないのと、モノマーがアグリゲートと分離していないという事実から容易に説明できます。
図1:UVと光散乱(90゜)の応答をASTRAで作成したクロマトグラム
図2:BSAの分子量と溶出容量の関係とUVデータの重ね書き