グリコシル化とPEG化は、最も一般的なタンパク質の修飾法です。 前者は糖類が結合されており後者は標準ポリエチレングルコールが、タンパク質の半減期を伸ばし血液の流れにより加水分解などを起こしづらくするために"ひげ(ウイスパー)"として結合されています。 ここでは、PEG化されたタンパク質について、HPLCシステム(SEC)にminiDAWNを接続して、SEC-MALS分析を行うことによりわずか15分の測定により有用な結果をえることができました。
SEC-MALS分析から得られる最も重要な情報は次のとおりです。
1) タンパク-PEG-タンパクの結合:
タンパク質にはPEGと結合する可能性がある8つの部位が存在することが知られていることから、タンパク-PEGの結合による最大分子量は56Kであるといえます。 (タンパク16K+PEG(8x5K))。 ところが、ASTRAソフトウエアによる結果では、100Kという高い分子量値が得られました。 これは、タンパク-PEG-タンパクの錯体(コンプレックス)の存在を示すものであり、これらの予期しないコンプレックスの存在はサンプルの薬理特性に大きな影響を与えます。
2) PEG化の度合(程度):
miniDAWNの分子量は絶対値であり、PEG-タンパク生成物について PEG化の度合いが構造について仮定を設けずに決定できます。
3) アグリケーションの検出:
非常に高分子量(~500K)であるが、非常に密度が高い(Rg<10nm)低濃度の物質が約8mLに溶出します。 これらのアグリゲートはサンプルの他の部分よりあきらかに強く散乱します。 最近、アグリゲートと患者の免疫反応生成の関連性についてFDAの関心事となり、これらのアグリゲートは臨床試験前に除去することが必要になりました。 miniDAWNは、タンパク質のアグリゲーションの減少をモニタリングすることができるので製造プロセスの変更の検討に有効です。
4) 反応の程度:
未反応PEGの濃度に基づきPEG化反応の範囲が決定できます。 この情報は、製品の有効性を改善するための反応工程の変更に用いることができます。
図1:このクロマトグラムは8mLにアグリゲートを示しており、相当する位置にminiDAWNの大きな信号が見えます。
図2:miniDAWNの90°の光散乱信号と分子量を図示したもので、タンパク修飾度合いの異なったものが広い分子量範囲で存在することを示しています。