セルロース(Cellulose)は繊維工業や製紙工業にとって非常に重要な高分子であり、その分子量の管理が品質に大きな影響を及ぼしますが、それが巨大分子であるため誘導体化を行わなければTHFのような一般的な溶媒に溶けず、そのキャラクタリゼーションは非常に難しいといわれています。 誘導体化を行うということは本来の性質、特性を損なうため、通常は塩(塩化リチウムあるいは臭化リチウム)を添加したジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解し分子量分布測定(GPC)により分析しますが、この方法は標準試料を用いて作成した検量線を使用するため、得られる情報は標準試料に換算した相対分子量だけです。 またこの場合セルロースとカラム充填剤との相互作用だけでなく標準試料とカラム充填剤との相互作用も検討する必要もあります。
図1はDAWN DSPを用いたセルロースと、2種類の単分散ポリスチレンスタンダードの絶対分子量と溶出容量の関係を表していますが、同じ分子量を比較すると両者の溶出位置が大きく違うことがわかります。 セルロースの分子量測定にはスタンダードを用いるGPC測定は不適当であると言えます。
多角度光散乱光度計(DAWN DSP)とGPC装置を接続することにより検量線を作成する必要がなく、またセルロースとカラム充填剤との相互作用を意識せず絶対分子量や分子サイズなどの情報を得ることができます。
尚、本データはLenzing AG社(オーストリア)よりご提供頂きました。
図1:セルロースと、2種類の単分散ポリスチレンスタンダードの絶対分子量と溶出容量の関係。 同じ溶出位置でスタンダードがセルローズの10倍大きいことがわかります。
図2:製造工程の違う代表的なセルロース3種類の、分子量の微分曲線。